2013年10月15日

【重要文化財】 京都府庁旧本館正庁 壁装材の修理




京都府庁旧本館は、現在の京都府庁舎と同じ京都市上京区下立売通新町西入薮ノ内町にあります。

明治37年(1904)に完成したルネサンス様式の建物で、日本人建築家による西洋建築様式習得の到達点を示す作品として、高く評価されています。

明治期の姿を損なうことなく、今も行政庁舎として使われている点で、貴重な存在と言えます。

建物内外の優れた意匠とその歴史的価値から、平成16年(2004)12月10日重要文化財に指定されました。



正庁は京都府庁旧本館の2階にあり、公式行事や公賓の接遇のための最も格式の高い広間です。

正庁の壁はエンボス加工の凹凸で文様がかたどられていますが、これは19世紀に英国で発明されたリンクルスタという壁装材によるものと言われています。

平成24年度重要文化財京都府庁旧本館正庁改修工事において、弊社はこの壁装材の修理を担当しました。



リンクルスタ修理前-1.jpg
リンクルスタ修理後-1.jpg
 修理前
 修理後
 改修工事において洗浄されたので、壁全体が白くなりました。
修理後の写真では、都合により一時的にモールの一部を取り外しています。



この壁装材は耐久性がありますが、長い年月を経て亀裂や欠失が見られました。

今回の修理では、壁装材の剥離した箇所には接着剤を挿入し小型アイロンで伸ばしながら圧着しました。

欠失した箇所には、同じ文様の
壁装材で補いたいところですが、現在同じものを入手することはできません。

そこで厚い和紙に絵具でエンボス状の凹凸を再現して
壁装材を模造し、これを貼り付けてさらに色調を整えて仕上げました。



リンクルスタ模造工程-1.jpg
壁装材の模造工程


リンクルスタ模造品-1.jpg
壁装材模造物



近世の社寺等建造物彩色では、絵具を盛り上げて半立体的な文様を描く「置き上げ(起き上げ)」と呼ばれる技法があります。

使用する材料は異なりますが、日本古来の彩色技法が、西洋様式による近代建築の修理に生かされました。







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2013年10月10日

【名古屋市指定文化財】 揚輝荘聴松閣壁画の補彩




揚輝荘は、株式会社松坂屋の初代社長であった伊藤次郎左衛門祐民氏が、大正から昭和初期にかけて名古屋市千種区法王町、覚王山の丘陵地に建設した別荘です。

揚輝荘南園の中央にある聴松閣は、ハーフチンバーの外壁など山荘風の外観をした迎賓館で、昭和12年(1937)に建設されました。

地上3階、地下1階の各部屋は、世界の様々な様式で装飾されています。

平成20年5月26日、聴松閣を含む揚輝荘5棟は、名古屋市指定有形文化財(建造物)に指定されました。



東面北側壁修理前.jpg
 聴松閣地階ホール東面北側壁 修理前
文様部分は絵画部分の四周に配されています。
絵画部分の下方に、ハリハラン氏の署名が見て取れます。




平成23年度から始まった揚輝荘聴松閣修復整備工事において、弊社は地階ホール壁画(文様部分)の補彩を担当致しました。

地階ホール壁画は、松坂屋に嘱託員として勤務していたインド人ハリハラン氏が、昭和13年に描いたものです。

70余年を経て、壁画は剥落・汚染・カビが発生するなど、損傷が進んでいました。

今回の事業では、絵画部分には手を加えず、文様欠損部分に範囲を限定して補彩をしました。



1揚輝荘聴松閣修理前部分-1.jpg
2揚輝荘聴松閣修理後部分-1.jpg
西面北側壁 補彩前
 

西面北側壁 補彩後

 
 3揚輝荘聴松閣修理前部分-1.jpg 4揚輝荘聴松閣修理後部分-1.jpg
 東面北側壁 補彩前


東面北側壁 補彩後
 

 5揚輝荘聴松閣修理前部分-1.jpg 6揚輝荘聴松閣修理後部分-1.jpg
 東面中央扉上壁 補彩前 東面中央扉上壁 補彩後



聴松閣は過日無事に竣工を迎え、平成25年8月から一般公開が始まっています。

本事業でお世話になりました関係各位に感謝申し上げます。






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2013年07月12日

文化財修理技術保存連盟 第2回全国研修大会




文技連第2回全国研修大会-.jpg


文化財修理技術保存連盟(文技連)は、文化財建造物に関する選定保存技術を保存する7団体で構成されています。

平成25年7月6日・7日の2日間にわたり、 第2回全国研修大会「技術の伝承」 ―ほんものをもとめて― がホテルルビノ京都堀川(京都市上京区)にて開催され、弊社も参加しました。

今回は一般参加も含め全国から関係者約180名が集まり、下記のプログラムで
文化財修理に関するさまざまな問題について議論されました。




7月6日(土)
 12:30  受付    
 13:00 開会(司会) 日本伝統瓦技術保存会   竹村優夫氏
 13:00〜13:05 開会挨拶 文化財修理技術保存連盟 理事長 西澤政男氏
 13:05〜13:15 趣旨説明 文化財修理技術保存連盟  副理事長 田中敬二氏
 13:15〜13:40 来賓祝辞 文化庁文化財部 参事官 村田健一氏
   京都府教育庁文化財保護課 課長 磯野浩光氏
   (公社)全国国宝重要文化財所有者連盟 理事長 落合偉洲氏
 (休憩)
 14:00〜15:30 基調講演 元 近畿大学工学部建築学科教授  櫻井敏雄氏
    演題 「桃山様式はどのように成立したのか」 
 (休憩)
 15:45〜18:00 パネルディスカッション 「技術の伝承」 ―ほんものをもとめて―  
   コーディネーター 歴史的建造物修復建築家  村田信夫氏
   パネリスト 奈良県文化財保存事務所  猪又規之氏
   (公財)文化財建造物保存技術協会  今井成享氏
   (公財)和歌山県文化財センター  多井忠嗣氏
   (公社)全国社寺等屋根工事技術保存会  村上英明氏
   (一財)全国伝統建具技術保存会  高橋利幸氏
   文化財畳保存会  佐竹真彰氏
 18:00〜18:10 第1日目総評 (公社)全国国宝重要文化財所有者連盟 事務局長 後藤佐雅夫氏
 (休憩)
 18:30〜 交流会(司会) (特非)日本伝統建築技術保存会  松本高広氏




7月7日(日)
 08:00  受付   
 08:30 開会(司会) 全国伝統建具技術保存会  横田栄一氏
 08:35〜9:45 アピール ―ほんものをもとめて― 文技連加盟団体  
    (特非)日本伝統建築技術保存会  松本高広氏
    (公財)全国社寺等屋根工事技術保存会  長崎眞知夫氏
    全国文化財壁技術保存会  中島正雄氏
    社寺建造物美術協議会  荒木かおり氏
    (一財)全国伝統建具技術保存会  石山幸次郎氏
    文化財畳保存会  磯垣昇氏
 (休憩)
 10:00〜11:15 分科会   
   第1分科会 「ほんものと技術の伝承」 座長:奈良文化財研究所建造物研究室  室長 林良彦氏
   第2分科会 「ほんものと社会」 座長:京都府教育庁文化財保護課 副課長 鶴岡典慶氏
   第3分科会 「ほんものと材料、道具」 座長:滋賀県教育委員会文化財保護課 主幹 菅原和之氏
   第4分科会 「ほんものと文化財保護」 座長:兵庫県教育委員会文化財課 課長 村上裕道氏
   第5分科会 「文化財修理の学術性」 座長:文化財建造物修復技師  鳴海祥博氏
 (休憩)
 11:30〜12:00 分科会の報告 上記座長五氏  
 12:00〜12:25 総評 文化庁文化財部 文化財調査官 西山和宏氏
   岡山理科大学工学部 教授 江面嗣人氏
 12:25〜12:30 閉会挨拶 第2回全国研修大会実行委員長  澤野道玄氏




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2013年06月05日

第141回 都をどり



平成25年4月1日(月)〜30日(火)、京都・祇園甲部歌舞練場において、第141回都をどり「春宴四季巡昔話(はるうたげしきめぐるものがたり)」全八景が開催され、弊社は美術を担当させていただきました。

道具帳(下絵)と公演写真の一部を掲載いたします。



 第八景.JPG
第八景 御室桜春宴 



演目道具帳公演
第三景
通小町小野草紙
第三景道具帳.JPG第三景.JPG
第六景
通天の紅葉
第六景道具帳.JPG第六景.JPG
第七景
鶴の恩返し
第七景道具帳.JPG第七景.JPG



祇園甲部歌舞会様をはじめ、関係者の皆様に御礼申し上げます。


公演に関する詳細は、下記ホームページを御覧ください。
 
   都をどり公式ウェブサイト   http://www.miyako-odori.jp/top.html







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2013年05月30日

御香宮神社随神像修理






御香宮神社随神像鎮座-2.jpg
御香宮神社本殿前に鎮座する随像(修理後)



平成24年度に弊社が受託した御香宮神社随神像の修理が過日無事に完了しましたので、お知らせいたします。



【 対 象 の 概 要 】

  名   称  木造随神倚像
  員   数  2躯
  時   代  未詳
  寸   法
      
  阿形 像高1070mm 袖張1330mm
  吽形 像高1030mm 袖張1300mm  
  品   質  木造 彩色及び漆箔・漆仕上げ
  所在地  京都府京都市伏見区御香宮門前町



御香宮神社の木造随神倚像2躯は、昭和三年と平成六年に塗り替え等を経ていますが、近年傷みが目立つことから、この度の修理に至りました。

狩衣は、漆下地の上に文様を置上げてから仕上げの漆を塗ることにより、細やかな光沢を見せています。

面貌、平緒の鳳凰図、台座に敷かれた虎皮等の彩色は、所有者様の意向を汲んで描きました。



御香宮随神像修理前-2.jpg 御香宮随神像修理後-2.jpg
阿形 修理前阿形 修理後



関係者の皆様に御礼申し上げます。
ありがとうございました。








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2013年05月23日

【重要文化財】 大福光寺本堂保存修理工事(剥落止工事)





「方丈記」最古の写本を所蔵していることでも知られる京丹波の古刹、真言宗御室派 大福光寺。

本堂と多宝塔は重要文化財に指定されており、往時の大伽藍を偲ぶことができます。

平成24年度に、大福光寺本堂は屋根葺替・部分修理を主な内容とする保存修理工事が実施されました。

本工事において弊社は内部彩色を対象とした剥落止工事を担当し、過日無事に竣工を迎えましたので、お知らせいたします。




【建物の概要】
 大福光寺本堂竣工.jpg
 名称大福光寺 本堂(毘沙門堂)
 員数1棟
 建築年代
嘉暦2年(1327) 棟木銘
同年、足利尊氏が現在地に移築したと伝わる。
 構造形式桁行五間、梁間五間、一重、入母屋造、 檜皮葺、南面
 文化財の種別重要文化財
 文化財の指定年月日明治37年(1904) 2月 18日
 所在地京都府船井郡京丹波町下山岩ノ上
 主な修理履歴
昭和6年(1931) 解体修理(現状変更)
昭和41年(1966) 屋根葺替工事



大福光寺本堂内部は、内陣四天柱廻りの柱・横臥材・組物等に彩色があります。

いずれも黒塗装の上に白色下地を引き、赤色や黄赤色で素朴な文様を描いたもので

修理前には彩色塗膜は層状に剥離しており、また雨漏りが原因と思われる暗褐色汚染で当初の鮮やかさが失われていました。

京都府教育庁指導部文化財保護課様の指導監督の下、膠水や布海苔抽出液で彩色塗膜の剥落を止め、また湿式洗浄(クリーニング)によって暗褐色汚染を除去しました。



大福光寺本堂剥落止前.jpg
大福光寺本堂剥落止後.jpg
 修理前 (斜光撮影)
彩色塗膜が層状に剥離している。

 修理後 (斜光撮影)
剥落止めにより、彩色塗膜が原状に回復した。


 大福光寺本堂洗浄前.jpg 大福光寺本堂洗浄後.jpg
 修理前 (順光撮影)
彩色塗膜が暗褐色に汚染されている
修理後 (順光撮影)
湿式洗浄により、暗褐色汚染が除去された。




本工事でお世話になりました関係者の皆様に御礼申し上げます。










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2013年05月07日

第64回 京おどり





第5景 都大路・下(詩仙堂の紅葉).jpg 
第3景 都大路(下) 詩仙堂の紅葉





平成25年4月6日より21日まで、京都・宮川町歌舞練場において、第64回 京おどり 「京浪漫花吹雪(みやころまんはなふぶき)」 全七景 が開催され、弊社は美術を担当させていただきました。

道具帳と公演写真の一部を御紹介いたします。



 
道具帳
公演
第3景 都大路(上)
夏の都大路
 
第3景 都大路・上(夏の都大路)道具帳.jpg

第3景 都大路・上(夏の都大路)公演.jpg
第6景 雪女
冬の山
 
第6景 雪女(冬の山)道具帳.jpg

第6景 雪女(冬の山)公演.jpg
第7景 宮川音頭
大覚寺唐門前
 
第7景 宮川音頭(大覚寺唐門前)道具帳.jpg

第7景 宮川音頭(大覚寺唐門前)公演.jpg
 




宮川町お茶屋組合様をはじめ、関係者の皆様に御礼申し上げます。

本公演に関する詳細は、下記ホームページを御覧ください。
  

  宮川町お茶屋組合公式サイト   http://www.miyagawacho.jp/
 






posted by 川面美術研究所 at 10:00| 舞台美術

2013年04月10日

木像初代通圓座像および厨子の修復

設置後.JPG 修復前 通圓像.JPG 修復後 通圓像.JPG厨子.JPG復原図1.JPG
店内安置の様子
 修復前 通圓座像
修復後 通圓座像
 修復後の厨子
 厨子彩色復原図



株式会社通圓(京都府宇治市)所蔵の 木造初代通圓座像および厨子 の修復が完了しましたのでお知らせ致します。


平成242月に開催された第七回文化財ドックを通じて、株式会社通圓の通圓亮太郎様よりご相談を受けました。

株式会社通圓は平安時代末永暦元年(西暦1160年)創業で、現在も宇治橋の東詰で営業されている宇治茶の老舗です。

通圓像は源頼政と初代通圓の主従関係を物語った狂言「通圓」の舞姿を第七代目通圓と交流のあった一休宗純が制作したと伝えられています。


今回、通圓像は彩色保存処置と木部修理、厨子は彩色・木部・金具・漆の各補修と彩色調査を実施いたしました。

クリーニングで後世に塗られた古色を丁寧に取り除いたところ、通圓像・厨子ともに当初の彩色が判明しました。


株式会社通圓様、公益財団法人京都古文化保存協会様には大変お世話になりました。
また厨子の補修に関しましては、伸和建設株式会社様、株式会社森本錺金具製作所様、株式会社さわの道玄様にご協力いただきました。
御礼申し上げます。
ありがとうございました。


通圓像と厨子は通圓様の店内でご覧いただけます。

詳しくは下記HPをご参照ください。


株式会社通圓オフィシャルホームページ http://www.tsuentea.com/






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2012年12月12日

第55回 祇園をどり



平成24年11月1日(木)〜10日(土)、京都 祇園会館において第55回祇園をどり「座戯遊興種(ざにたわむるるゆうきょうのくさわい)」が開催され、弊社は美術を担当させていただきました。

道具帳(下絵)と公演写真の一部を掲載します。


 

演目
道具帳
公演
第一景
蝶と扇の連舞の場
蝶と扇の連舞の場.JPG蝶と扇の連舞の場.JPG 
第三景
千里が竹の場
千里が竹の場.JPG 千里が竹の場.JPG 
第五景
祇園東小唄
祇園東小唄JPG.jpg祇園東小唄JPG.jpg 




祇園東歌舞会様をはじめ、関係者の皆様に御礼申し上げます。

公演に関する詳細は、下記ホームページを御覧ください。
祇園東歌舞会公式ウェブサイト   http://www.gionhigashi.com/index.html



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2012年09月21日

『 家庭画報 』 2012年10月号掲載 二条城・二の丸御殿障壁画模写事業の現場



家庭画報2012年10月記事-1.jpg



世界文化社発行『家庭画報』2012年10月号にて、二条城・二の丸御殿障壁画模写事業が紹介されましたので、お知らせいたします。

本誌と綴じ込み付録の2箇所にわたって、写真付きの記事が掲載されています。




『家庭画報』最新号の詳細は、下記ホームページを御覧ください。

家庭画報2012年10月.jpg  「家庭画報.com」     http://www.kateigaho.com/magazine/






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