当研究所が彩色を担当しました寂光院本堂復原について御報告いたします。
建物の概要
所在地 ……… 京都府京都市左京区大原草生町676
名称 ………… 寂光院本堂
形式 ………… 正面三間 側面三間 一重 入母屋造 葺
建築年代 …… 慶長年間
『平家物語』大原御幸で知られる寂光院本堂は、平成十二年五月九日放火によって失われましたが、三年半に亘る復原工事を経て、平成十七年三月無事竣工を迎えました。
内陣柱の彩色復原は、焼失以前に撮影された数枚の写真を手がかりに行いました。写真に見られる痕跡から、柱の巻下げ部分には荘厳な金襴巻きが施されており、唐草や菊の紋などの文様も確認できました。
しかし褪色が甚だしく、建築当初(桃山〜江戸初期)の色を写真から読み解くことは困難であったので、同時代の類例資料などから推測し、様々な復原案を作成しました。
これらの復原案をもとに関係者で協議し、寂光院本堂の内陣を彩るに相応しい復原案を採択しました。
復原彩色は、画材から技法に至るまでできる限り過去の建造物彩色に忠実であるように努め、にかわを溶剤とし、水干絵具・岩絵具を用いました。
また写真から金箔の部分は胡粉を高く盛り上げていることが推定できたので、胡粉による置上技法を採用しました。
平成十六年八月から彩色作業を開始し、同年九月末には尼寺らしい繊細な雰囲気の彩色が甦りました。
寂光院へは、市バス・京都バスの大原行きで終点「大原」停留所下車、徒歩約20分です。是非足をお運び下さい。
写真 : 内陣柱彩色作業の様子