2014年11月10日

【京都市指定文化財】平岡八幡宮本殿彩色保存修理

 
 
 
平成26年度、有現会社 川面美術研究所(代表取締役 荒木かおり)は、京都市指定文化財平岡八幡宮本殿彩色の保存修理を担当いたしました。
 
本修理に伴う調査によって、多くの発見がありましたのでその一部をご紹介いたします。
 
 
 
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平岡八幡宮本殿外観(修理前)
京都市内では希少な切妻造りの大規模社殿です。
 
 
 
 
平岡八幡宮本殿の概要
 文化財の名称 平岡八幡宮
 建築年代 文政9年(1826)
 構造形式 桁行三間、梁間二間、向拝一間、切妻造、銅板葺、正面南向き
 文化財の種別 京都市指定有形文化財(建造物)
 所在地 京都市右京区梅ヶ畑宮の口町23
 
 
 
 
本殿内部.jpg
平岡八幡宮本殿内部(修理前)
外陣の「花の天井」はよく知られています。
 
 
 
   
平岡八幡宮本殿は内外の広範囲に彩色が施されていますが、今回の保存修理では、向拝蟇股を彩色復元(塗り替え)、内外陣境のマグサ・内法長押を現状維持(剥落止め・補筆)とする部分的な施工となりました。
 
 
   
内法長押 修理前.jpg
本殿内外陣境内法長押(東脇間) 修理前
伝説の「白玉椿」が描かれていますが、大部分の塗膜が剥落していました。
 
 
  
内法長押 修理後.jpg
本殿内外陣境内法長押(東脇間) 修理後
現状彩色を剥落止めした後、古写真や顔料分析等に基づき、塗膜剥落部に補筆しました。
 また、部材の周辺と熨斗目文様の一部に金紙を貼り付ける特殊な技法も判明したので、再現しました。
 金具も本修理の後、取り付けられました。
  
 
 
本殿蟇股彫刻 修理前.jpg
本殿向拝蟇股及び彫刻 修理前
蟇股中央の彫刻は弁才天坐像と伝えられていますが、琴を弾くという大変珍しい姿で表されています。
調査の結果、当初は別の場所に安置されていた彫刻を、後世になって転置したものと推定されました。
 
  
本殿蟇股彫刻 修理後.jpg
本殿向拝蟇股及び彫刻 修理後
顔料分析に基づき、当初の彩色に復元いたしました。
 
 
 
今回の保存修理における最大の発見は、平岡八幡宮本殿彩色を手掛けた絵師の名が確認されたことです。
 
 
 
山本探淵.jpg
 本殿水引虹梁天端の墨書「彩色/山本/探淵」
本殿内外の建築部材に、「彩色 山本探淵」という墨書が残されていました。
山本探淵は、平岡八幡宮本殿の建築年代と同時期に、京都で活躍した絵師です。
鶴沢探泉(江戸狩野派系の鶴沢派4代目)の門人であり、
当時の『平安人物志』 (近世京都の文化人名録)にその名を見つけることができます。
  
 
 
 
神社・寺院等の建築に関わった大工、あるいは絵画を制作する絵師・画工に関しては、歴史的な研究が進んでいます。
 
しかしながら、神社・寺院等建造物の柱や壁等に描かれた「建造物彩色」の制作者に関しては、未だによくわかっていません。
 
そのようななかで平岡八幡宮本殿は、建造物彩色の制作者の素性が文献によって裏付けられる貴重な事例と言えます。
 
日本美術史の面からも、鶴沢派町絵師の活動領域が、絵画のみならず建造物彩色にも広がることを示す史料として、注目に値するのではないでしょうか。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
posted by 川面美術研究所 at 14:00| 建造物装飾

2014年11月06日

長勝寺 弘法大師御影の制作

 5月末、小豆島の長勝寺様に「弘法大師御影」を納品いたしました。
  
 
                       
弘法大師.jpg
 
 
 長勝寺様とは18年程前に「真言八祖像」を納めてさせていただいてからのお付き合いです。
今回は、お寺所蔵の弘法大師像が小さいため大きいものを製作して欲しいというご依頼でした。
 
 東寺本の弘法大師の像(議義本尊 重要文化財 京都・東寺蔵)がお好みとのことでしたので、
東寺本図像を参考に、長勝寺の床の寸法を伺って、できるだけ大きな弘法大師像を描きました。
 
 
 
弘法さんを眺める.jpg
 
大きいので間延びしないか心配になりましたが、上手く床に納まりました。
               現在は、これが小豆島で一番大きな弘法大師像とのことです。
 
紅葉の美しい季節になりました。
小豆島に訪れることがありましたら、一度お立ち寄りくださいませ。
 
長勝寺様をはじめ、この事業の関係者の皆様に感謝申し上げます。
posted by 川面美術研究所 at 09:40| 美術工芸
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